医師に特有の支出が多い理由
医師、とくに一般的な勤務医の先生は、税金の面でとても不利です。
医師の平均年収は約1350万円といわれますが、
年間収支がプラマイゼロ
で生活している人もたくさんいます。
なぜ、こういった「中流階級貧乏」の状態になるのでしょうか。
世間では、こういった中流階級貧乏の原因を
「生活水準が高いから」
という理由を強調し、
- 車は買うな
- マイホームは買うな
- 子供は公立に入学させろ
ということを強調している書籍、ネット情報をたくさんみかけます。
たしかに、お金の知識マネーリテラシーはとても大事です。
このブログでも、
Amazonで大人気の
「お金の大学」両学長@リベ大
をイチ押ししています。
ただ、自分自身が医師である私の意見は少し異なります。
医師、特に医療を真剣に勉強している先生方に多い中流階級貧乏の原因は
自己研鑽に使うお金が多い
ということです。
医師にとって自己研鑽は必須です。
なぜなら自分の知識、技術が資本だからです。
そして、その知識や技術を診察や手術に活かして、
患者を増やす、手術件数を増やすという結果につなげ、病院の売上に貢献します。
しかし、この自己研鑽に使う費用は、税務上は、
あくまで個人が支出したお金であって「経費」ではありません。
大げさにいうと、
浪費に使ったお金と同じ
ものだと考えられてしまいます。
ちょっと悲しいですが、法律なので仕方がありません。
そして、これが税金の面で大きなデメリットとなります。
個人事業主と医師の収入比較
例えば、
年間の給料が2000万円の医師と、
売上が2000万円の個人事業主を考えます。
自己研鑽、経費にかけているお金を1000万円とします。
※あくまで大まかなイメージを掴んでもらうためで、細かい数字は考慮していません。
一般的な個人事業主などでは、
設備や人材などにお金(経費)を投資をして、
稼ぐ力をアップさせて売上を上げます。
利益 = 売上(2000万) ー 経費(1000万)
となり
利益が1000万円に対し、
税金と保険料は大体317万円になります
手元のお金は
手元のお金 = 利益(1000万円) ー 税金(317万円)
となり
683万円
残るのに対し、
医者個人は給料がそのまま税金として計算されるので、
まず、税金が引かれます。
2000万円の給料
で
税金と保険料は大体 700万円
がかかります。
この、「給与所得に対する税金の先制攻撃」が最も痛手なのです。
経費無用に2000万円から計算した税率で税金を取っていかれるわけです。
給料2000万円 ー 税金・保険料(700万円) = 1300万円
がまず残ります。
そしてここから経費 1000万円を捻出することになります。
手元のお金 = 1300万円ー 経費(1000万円)
手元には300万円しか残りません。
いくつかこの自己研鑽費の節約については対策が行なえます。
医師が自己研鑽費を経費にする方法
1.事業収入を作る
医師にとって自己研鑽はもっとも効率がよい投資です。
しかし、その投資の出口が、勤務先の病院の収益増加だけになっていないでしょうか。
「雇用主を成長させる事が私の責務です」
という侍魂も立派ですが、
投資した自分へのリターンがあったほうが、成長効率も良くなります。
その結果として、その事が医療技術の成長や、勤務先への貢献にもつながることがあります。
ぜひ、自分の技術を活かして、自分の事業を作り出し、成長させていきましょう。
2.勤務先を選定する
医師として勤務するにあたり、その勤務条件は重要です。
勤務病院によっては、
- 教科書など書籍購入のための費用を支給してくれる
- 研修会参加、学会参加の費用を負担してくれる
- 海外学会の費用も年〇〇円、〇回までなら認めてくれる
という病院もあります。
こういった条件を前提として、自分の勤務病院を選ぶのもよいでしょう。
3.研究費を獲得する
このページの趣旨とはことなりますが、医師にとって、
研究費は最も効率よく使える「経費」です。
日本には「科研費」を始めとして、医学研究のための研究費があります。
この研究費は数百万円から数千万円のものまであり、一度獲得すれば、
「研究に必要な費用」
に使用することができます。
大きな額のお金は研究のための装置や、試薬、実験環境に使われますが、
この研究費の用途の中には、
- パソコンの購入
- 研修会、学会の参加
- 国内、海外出張の参加費
といった中くらいの費用から
- パソコン周辺機器
- 文房具
- 書籍購入
といった、小さなもの、いわゆる消耗品費まで使用する事ができます。
この研究費の最大の欠点としては
学術機関に所属していないと獲得できない
ということです。
しかも、日本の場合は、たとえ大学医局に所属したり、大病院に勤務していても、
「ーーー大学病院」
という教育病院機関でないと、獲得が難しい事が多いです。
そのため、一般病院勤務医にはけっこう難しい話になってきます。
また、蛇足ですが、
医局所属の出張先の先生と、
医局の大学病院にいる先生との間で、
研修や、出張など、いわゆる経費にあたる出費に関して金銭感覚が違うのも、この「研究費」の存在が大きいのです。